知っていると便利なバレエ舞台用語辞典 |
ここではバレエの公演や発表会で舞台スタッフが使っている代表的な専門用語・言い回しをご紹介します。いわゆる「裏方」さんの使う言葉の多くは、バレエの舞台の場合でも日本の伝統芸能、すなわち歌舞伎や文楽などの舞台で使われていた用語がそのまま持ち込まれています。また外来語でも省略して使われる場合が多いので、特にバレエを学んでいる若いみなさんが発表会や公演のときに、スタッフの方々の会話がわからない事があるかもしれません。、ここではバレエの舞台を例にとってご説明しますので、参考にして下さい。 開き(あき)/幕開きくまくあき) 開演のこと 暗転(あんてん) ⇔ 明転(めいてん) 転換<参照>を照明を消して客席から見えない暗い状態で行うこと。 一文字(いちもんじ)/一文字幕(いちもんじまく) 客席から見た舞台上部にある間口を左右に横断した幕のこと。舞台の上部機構を視覚的に隠す意味もある。 一ベル(いちべる) 開演5分くらいに鳴らされる開演間近かを観客並びに出演者・スタッフに告げるベル。「一ベルを入れる」といったように使われる。 板付き(いたつき) 幕が上がった際、あるいは暗転<参照>の際、舞台上で踊りだす前の不動のポーズでいる状態。 インカム 無線イヤホンマイク付トランシーバー。頭に装着して使用されるため両手が自由に使えるのが特徴で作業用に多様される。舞台では遠く離れたスタッフ間の連絡通信に使われる。 大黒(おおぐろ) 舞台後方に備えられた黒一色の幕。バレエではコンクールの時などに背景に使われる場合がある。 押す(おす) タイム・スケジュールが伸びた/遅れた状態。「客入れ<参照>は5分押し」といったように使う。 オケ・ピット/オーケストラ・ピット Orchestra Pit オーケストラが入る舞台と客席間の窪み(ピット)。オーケストラ・ボックスとも言う。 音出し(おとだし) オーケストラを用いず、CD,MD、テープなどを音源とした舞台、またはリハーサルで、音楽を流すこと。 書割(かきわり) 大道具の一種で客席に面した部分だけそれらしい装飾を施した舞台装飾。木製の骨組みにベニヤ板や紙、布を張り合わせて作られることが多いため貼物(はりもの)とも呼ばれる。 上手(かみて) ⇔ 下手(しもて) 客席から見た舞台右手。 きっかけ/キュー Q/cue 踊りだすタイミング、もしくは踊りだすタイミングを合図することを言う。「袖<参照>からキューを出す」というと、袖から踊りだすタイミングを合図すること。 客入れ(きゃくいれ) 開場のこと。 客電(きゃくでん) 観客スペースの天井照明 キュー → 「きっかけ」参照 キュー・シート Q Sheet 舞台スタッフや照明スタッフに踊りのきっかけ<参照>が分かるように記された申送り書・指示書。 間(けん) 舞台スタッフが多様する尺貫法に基づく長さの単位で、一間は1.82メートル(6尺)。一尺は30.3センチ(10寸) ゲネ/ゲネプロ Generalprove ゲネラルプローヴェ というドイツ語の略。衣裳を付けて本番を想定して同じ条件で行う舞台稽古のこと。 香番表(こうばんひょう) 出演者の登退場を幕・場ごとに記入した一覧表。 小屋(こや) 劇場のこと。「小屋を押さえる(発表会・公演などのために劇場に予約を入れる)」といった様に用いられる。 殺す(ころす) 照明やその他舞台機構の機能を停止、または固定すること。 サス Sus サスペンション・ライト:Suspention Lightの略。舞台上部の照明用バトン<参照>、あるいはボーダー・ライト<参照>に吊りこむ舞台真上からの照明類の総称。一般にはスポット・ライトを指す場合が多い。またそうしたライト類が吊るされたプラットホーム<参照>を指す場合も多い。その場合は舞台手前から奥に向かって第1サス、第2サスと数えて行く。 作業灯(さぎょうとう) 舞台上でスタッフが作業するための照明。通常はボーダー・ライト<参照>を色を入れずに点灯する。 地明り(じあかり) 舞台上からの色などを入れない照明で、演技面を均等に、濃淡などつけずに照射している状態。 仕込み(しこみ 本番前に行う上演演目に用いる照明器具、舞台装置などのセッティングや幕の吊り込み<参照>など、上演に向けての舞台準備全般を指す。 仕込み図(しこみず) 作品の上演に必要な照明、舞台装置などの位置・設置場所を記入した指示書。照明用、吊物などの舞台装置用がある。 → 照明・吊物仕込み図の例 下手(しもて) ⇔ 上手(かみて) 客席から見た舞台左手。 紗/紗幕(しゃ/しゃまく) 目の粗いヴェール状の布地で作られた幕。紗幕の前だけに照明が落とされていると背後がほとんど見えず、紗幕後ろに照明を入れるとぼんやり紗幕背後が透けて見える効果があるため、転換などに多様される。 シーリング・ライト Ceiling Light 客席側から舞台を照射する照明。通常客席上部天井などに設置されている。 スポット・ライト Spotlight 演技者のみを点的に照らす照明。真上からのみ、あるいは左右いずれかから、または左右同時に照射する場合などがある。ピン(ライト)参照。 スモーク/スモーク・マシン ドライアイスなどを使用して煙幕を発生させる装置。 せり 舞台演技面の一部が昇降する機構。クラシック・バレエではあまり使われないが、たとえば「くるみ割り人形」のネズミの王様の登場のシーンなどで使用した例を見かける。 → 奈落 袖(そで) 舞台左右の客席から見えない部分。出演者の待機場所、舞台スタッフの作業スペース、大道具・小道具の置き場などに利用される。 袖幕(そでまく) 舞台演技面と上下(かみしも)の袖の間に吊られる幕で、出演者の出入りの目隠しとなる。ただの黒幕の場合(消し幕:けしまく と呼ばれる場合もある)もあれば木立などを模している場合もある。 ダイオード 本来半導体素子を意味するが、その発光を利用して作られた舞台上でのポジショニングを示すためのランプの一種。タバコのパッケージ大のボックスに小さな電球が仕込まれており、舞台前縁に出演者側に向けて置いて縦方向の位置決めに用いる。 建て込み(たてこみ) 書割<参照>などの大道具を舞台上に設置すること。書割などは置くだけの場合もあるが、たとえばバレエ「コッペリア」のコッペ李ウスの家などは実際にダンサーが二階に昇り降りするため、本格的かつ頑丈に建てなければならない。 吊物(つりもの) 幕類などバトン<参照>に吊って使用する舞台装置の総称。 テクニカル・リハーサル Technical Rehearsal 仕込んだ<参照>照明、舞台装置類が予定通り可動するかのリハーサル。 転換 場面・情景が変わること。もしくは変えること。 とばす/とびきる 作業のためにおろしていたバトン<参照>が引き上げられ、客席からは完全にバトンに装着した吊物<参照>だけしか見えない状態になること。 緞帳(どんちょう) 舞台と客席を仕切る幕で作品の舞台装置に含まれない幕。一般に豪華な素材で作られ、いわば劇場の顔となる幕。板緞(いたどん)、あるいは飛ばし上げ(とばしあげ)と呼ばれる一枚幕で上下昇降するものと、絞り(しぼり)と呼ばれるドレープ(襞)状にしぼりがあるタイプなどがあり、バレエの場合はオペラ(カーテン)と呼ばれる絞り型の、中央から左右に割れ下端から斜めに引き上げられて行くタイプが好まれる。尚、オペラ・カーテンの場合、生地が薄くて照明された舞台上が透けて見える場合などは板緞と併用する場合がある。 緞前(どんまえ) 「下がっている緞帳の前」の意味。フィナーレなどの際、下がっている緞帳の前に出てレヴェランス(挨拶)することなどを「緞前に出る」などと表現する。 中割(なかわり) 舞台中央を前後に仕切る幕で、場面転換などに用いられる。 奈落(ならく) 舞台上に設けられたせり<参照>が移動する竪穴。もしくは一般に舞台下を指す。「奈落の底」の語源。 場当り(ばあたり) リハーサルの一形態で、舞台上の位置を確認するために踊りを省いて移動、出入りのみ行う。 はける 演技面から袖<参照>に退場すること。 バトン Baton 舞台上に舞台を左右に横断して渡された様々な照明器具や吊り物<参照>を装着するための機構。作業する際には床近くまで降ろすことが可能。バトンの数は吊り物や照明をどれだけ仕込める<参照>かに関係するため、バトン数の少ない劇場では上演演目が限られる場合がある。 花道(はなみち) 歌舞伎の舞台では客席に向かって張り出しているが、現在の多目的ホールでは舞台左右の壁面に沿ってしつらえられていることが多い通路。この通路の奥を溜まり(たまり)といって溜まりからは外部と出入りが可能。バレエ「くるみ割り人形」の雪の場面では、しばしば合唱隊がここから花道に登場する。 はねる 終演のこと。 早替え(はやがえ) 同じダンサーがすばやく別の衣裳に着替えて同一幕に再度登場すること。 ピン (ライト) Pin 演技者を追う可動式ライトで、通常舞台前方左右から照射されるが、上部から照射されるスポット・ライト<参照>を呼ぶ場合もある。ピン・ライトには1基1名のオペレーターが付く。 プラットホーム 舞台上に備えられた照明器具などを吊るす昇降可能の枠組。サス<参照>と呼ばれる場合もある。 振り(ふり)/振付(ふりつけ)/振り写し(ふりうつし) “振り”は、踊りの構成・順番のこと。振付はそれを考え、踊りを創作すること、及びそれをダンサー達に教えることも指す。振り写しは後者とほぼ同じ意味で、振付家もしくはその振りを覚えたダンサーが、それを出演者に教え伝えること。 プロセニアム/プロセニアム・アーチ Proscenium 舞台と客席を視覚的に仕切り、演技面をあたかもテレビのフレームのように劇空間として生み出す額縁を言う。 ボーダー・ライト 舞台上から演技面を照射する照明で、一列に舞台を左右に横断して配置されている。この列は何列にも及び、舞台前縁より奥に向かって第一ボーダー、第二ボーダーと数えられて行く。 ホリ/ホリゾント Horizont 舞台の最も奥の壁、もしくはその前に吊られた幕(ホリゾント幕)。通常無地で、照明効果によって様々な表情を作り出す。 ホリゾント・ライト ホリゾントに照射する照明で上部バトンに吊るされた物(アッパー)と、床に置いたもの(ローアー)がある。 本ベル(ほんべる) 開演を告げるベル。 松ヤ二 滑り止め。袖<参照>に常備されており、踏み潰すようにしてポアント、バレエ・シューズに付着させる。 道行き(みちゆき) 歌舞伎から生まれた言葉だが、人々が文字通り道を移動して行く場面を指す。バレエでは多く幕前で行われ、「くるみ割り人形」の冒頭で人々がシュタルバウム家に集まるシーン(グリゴローヴィチ版他)、「ドン・キホーテ」のドン・キホーテとサンチョ・パンサの移動のシーン、「シンデレラ」で王子がシンデレラを捜し求めて各国を旅する場面などが代表的。 明転(めいてん) ⇔ 暗転(あんてん) 舞台が明るいまま転換<参照>を行うこと。 落(らく) 公演の最終日のこと。 リノ/リノリウム Linoleum 現在の多目的ホールの演技面はほとんど木製であるため、バレエに適した滑走性と衝撃吸収を得る目的で敷く合成素材の敷物。一般的に幅一間<参照>前後の長尺物で、グレー色。舞台ではこのリノリウムを隙間なく敷き詰め、隙間をテープで張り合わせるが、このテープはリノ(リノリウム)・テープなどと呼ばれる。 |
→ バレエ小事典・トップに戻る |